脳トレーニングと思考力:スポーツトレーニングに例えると

ここ数年、脳がブームになっていますね。脳トレとか呼ばれるゲームやパズル、
たくさん出てますし、売れてます。おまけにテレビはどこもクイズ番組花盛り。
20年前くらいでしたか、「頭の体操」シリーズの本がずいぶん流行ったことが
ありましたが、あれ以来でしょうか。

さて、その脳トレーニングですが、
脳トレやっておけば人生ばら色・・・なんてことは誰も思ってないでしょうが、
脳トレやっておけばとりあえずは充分、と思っている人は結構いるんじゃない
でしょうか。

もちろん脳トレーニングをすること自体は間違いなく良いことです。
それをふまえた上で、もうワンランク、ツーランク上を目指すのであれば、理解
しておいてほしいことがあります。

それは、脳トレーニングというのは、スポーツで言うと筋力トレーニングやランニング
などの基礎体力トレーニングにあたるもので、それはすべての基礎になるのだけれ
ども、それだけでスポーツがうまくなるわけではないということです。

筋力や走るスピード、持久力があれば有利ですが、スポーツがうまい人というのは
色々な体の部分を自分のイメージ通りに統合して使いこなす能力に秀でている人
のことを指します。それは基礎体力とはまた別の能力で、統合能力とでも言うべき
ものです。その統合能力は基礎体力とは別で、球技だったら実際にボールを使って
蹴ったり投げたり捕ったり(サッカーのリフティングやドリブル、野球のバッティングや
ピッチング、テニスのサービス練習などなど)、そのスポーツで必要な動作を繰り返し
やってみて、色々な状況でどう体を動かせばいいか学習して身につけるものです。

脳トレだけでは、単純過ぎてそうした統合能力の向上にはあまり役立ちません。
よく頭のまわる人、いわゆる地頭がいいといわれる人は脳をうまく統合して動かす
能力に秀でているのですが、この例えに引き合わせて考えると、脳トレだけでは
地頭を良くすることは出来ないことになります。
基礎能力だけではなく、統合能力を鍛える必要があるわけです。

では、どうすれば脳の統合能力を鍛えることができるのか?
またスポーツトレーニングのイメージで考えてみましょうか。

基礎体力がある程度のレベルまでいったら、次にやることは正しい動作の型、
パターンを覚えることですね。素振りだったり、パス練習、サーブ練習といった
ところから。つまり、体全体を使って初歩的なパターンを覚えるわけです。
そこから徐々により複雑になるようにレベルを上げて行きます。統合能力を鍛
えるのは、単純な筋肉の動作の組み合わせパターンを蓄積していく作業といえ
るでしょう。

頭の使い方を上達させる上でも、
最初は簡単なパターンを繰り返し、徐々に複雑なパターンへとレベルアップを
していくのは理にかなっているでしょう。そうすることで、自由自在に、ほとんど
苦労せずにパターンを使いこなせるようになることが出来れば、地頭力は向上
します。

また、地頭がいい、というのは特定の領域だけ頭がよく回るのではなく、いろいろな
ことに応用が利くということですが、それは考え方のパターンを数多く持っている
ために、新しいことにぶつかっても似たようなパターンを引っ張り出して応用が
出来るため、のみこみが速いというのが理由です。
スポーツ万能といわれる人も、普通の人よりも身体をどう動かせばよいかの
パターンを数多く持っているために、応用が利く、だから何をやらせても上達が
速いという、同じ理屈です。

この、自由自在に使えるパターンの数が多ければ多いほど、応用力が向上して
さらに新しいパターンを容易に増やすことが出来ます。ということは、脳の力、
あるいは思考力というものは、最初はなかなか急には向上しないけれども、
ある一線を越えると相乗効果が働いて急激に上昇する性質のものだということ
です。そこにたどりつくまで続けられるかどうか。それがキーポイントです。

ということは、ある程度の数のパターンを積み重ねるに足るだけの難しさ、複雑さ
をもったことを対象に頭の修行をしなければいけないということですね。ゴールを
低く置き過ぎれば得るものも小さいということになります。
「テニスラケットで素振りが10回できたら僕はもう満足」なんて思ってたらせいぜい
布団たたきくらいにしか応用できないでしょう?それで満足できますか?

さあ、それではどんなことが「充分に難しい、複雑なゴール」なんでしょうか。

結論から言うと、「人それぞれ」なんですよ。ガッカリしましたか?
まあまあ、ノーベル賞とるような学者と小学生とに同じようなゴールなんかあて
はめられないじゃないですか。当たり前のことです。
ここでは、何か「これにトライしてみようかな?」と思ったときにそれが充分難しい
ことなのか判別するための簡単な方法を紹介しておきます。

条件1:「手を動かして書くこと」
 人間の脳はとても横着です。テレビを見たり、漫画を読んだり、本といってもさほど
 苦労せずに読める程度の本を読んだりするだけなら実にうまく手を抜いて処理して
 しまいます。インプットするだけならすばらしく要領のいい奴なのです。
 ところが、アウトプットするとなると話は別。特に「書く」ということになると、大抵の
 人の脳はフル回転しないとおっつきません。
 漫画が好きな人なら、漫画が描けなくてもストーリーやキャラクターをオリジナルで
 書きためてみてもいいし、誰かの漫画のアナザーストーリーを考えてみてもいい
 でしょう。もちろん仕事上で企画を作ってみるのもいいですよ。

条件2:「それが上手になったときに、自分がどう変わっているかイメージできること」
 スポーツにも共通することですが、ゴール、目標のイメージが具体的であれば
 あるほど、何をやるべきかがわかりやすいですし、モチベーションも長持ちします。
 手持ちのパターンの数がある程度多くなるまではちょっと時間がかかりますから、
 自分が上達したときに、今と行動や発言、心の持ち方などがどう変わるか、最初
 は幻想でもかまいませんから、具体的にイメージできるかどうか考えてみてください。

条件3:「嫌なことはやらないこと。でも、大好きなことである必要はない。」
 嫌なことはやらないでいいです。無理に小説や論文を書こうとか、頭を鍛えるため
 に嫌だけど数学をやろうとか、そんなことはしなくて結構。長続きするわけないです。
 もともと大好きなことがあればいいのですが、意外に思われるかもしれませんが、
 「わたしはこれが大好きだ!」というものを持っている人は少ないのじゃないでしょうか。
 でも、大好きなものを探す旅に出てる暇はありません。私は、「嫌いじゃなければまず
 やってみて、やっぱり嫌だったらさっさと次のことに手をだす」というスタンスをおすすめ
 します。結果的にそのほうが好きなことを見つける早道だとも思います。