売り抜くために買うのではない、共に育てるために引き継ぐ ―中川×中島が語る「地域×AI×M&A」事業に込めた思い―

column

2026.07.08
  • コラム
  • 社内対談

「資本論で考えれば、今回の選択が正しいのか間違っているのかは分かりません。
ただ、Ballistaという会社はこうしたあり方を選ぶ、というのが答えです。  」

2026年5月、Ballistaは「地域×AI×M&A」による事業承継・再成長事業を開始しました。後継者不在とデジタル活用の遅れによって廃業の危機に瀕する、日本各地の「本物の強み」を持つ優良企業。それらをM&Aによって承継・永続保有し、AIを活用したトップライン成長型のバリューアップで企業価値を再構築していきます。短期EXITを前提とする従来のファンド型M&Aとは一線を画す取り組みです。

なぜ今、コンサルティングファームであるBallistaがこの領域に踏み込むのか。事業の着想から、AI時代における「本物」の価値、そして事業承継を考えるオーナー様への思いまで。代表取締役社長・中川と、取締役CSO・中島に語っていただきました。

「ただのコンサル会社では終わらない」——次のフェーズで描く挑戦の社会

インタビュアー:

まず、「地域×AI×M&A」という事業の着想は、いつ、どのようなタイミングで生まれたのでしょうか。

 

中川:

大前提として、Ballistaは「個人と企業が挑戦し続けられる社会の実現」をビジョンに掲げています。これからのAI時代に私たちがどのような企業になっていくのかを考えたとき、ただのコンサルティング会社ではなく、社会そのものを変えていくような、ユニークで価値を生み出せる会社になっていきたい。それが出発点でした。

創業から4期を迎える中で、コンサルティング能力や、組織の変革力、AIを活用する力、人材を育てる力、事業をグロースさせる力が一定ついてきました。だからこそ次のフェーズでは、社会を変えていく第一人者として、事業の形でそれを実現していきたいと考えています。

とりわけ意識したのが、外国の資本に取り込まれ、この国の宝が静かに失われつつあるという、課題と捉えるべき現在の社会構造です。そうならないように、日本の地域に根ざした企業と連携し、事業を承継していく。そのための取り組みこそ、今回のM&A事業です。

 

中島:

私たちBallistaは創業当初から、自分たちを「コンサルティングファーム」ではなく「プロフェッショナルファーム」と位置づけてきました。

世の中のコンサルティングには、膨大な企画書が提出されたものの、いざ始めると現実とかけ離れており、実行できなかった、というケースも少なくありません。私たちはそのような絵に描いた餅ではない、実行するための戦略を練り、お客様と一体となって自らの手で実行しています。

実行まで担う集団だからこそ、私たち自身が事業者となり今回の領域へ染み出していくのも、ごく自然な流れだと思っています。

また、これまでのBallistaのコンサルティング事業のクライアントは大手企業やエンタープライズが中心でした。ただ、創業当初から掲げ続けているのは「日本をより元気にする」ということです。それは大手企業を支援し続けるだけでは実現が難しく、地域に根ざし、日本の産業を支える中小企業の支援が不可欠です。今回の事業は、その延長線上にあります。

「魂が解体されていく」——売り抜くためのM&Aへの違和感

インタビュアー:

プレスリリースに「各地の優良中小企業が、短い時間軸の資本に取り込まれ、その魂が解体されていく光景を何度も目にしてきた」という一節があります。お二人は、どのような場面を見てそう感じられたのでしょうか。

 

中島:

企業価値を引き上げたうえで売却し、利益を得て次へ移る。それ自体を否定するわけではありません。ただ、日本の伝統や歴史は、一朝一夕でできあがるものではありません。何十年、時に何百年とかけて積み上げられてきたものです。その長い時間の上に立つ事業を、短い時間軸で引き受け、作り直し、また手放していく。そのとき、本来の価値が本当に守られるのか――私はそこに疑問を抱いています。継ぐ側もまた、同じだけの時間軸で向き合うべきではないか。そう考えています。

 

中川:

伝統や歴史を持つ企業において、後継者不足問題は、非常に深刻です。本来であれば、さらに成長できる可能性を持ちながらも、こういった課題を背景に、その可能性を十分に発揮できていない企業が数多く存在します。私たちはそうした会社の「夢」をつなげていきたいのです。Ballistaという一つの仲間として、ともに歩んでいく。「本当はもっとこうしたかった」「もっとこの地域に還元したかった」。そうした思いはたくさんあるはずで、それをつなぎ、さらに広げていく。そうすることで、社会全体がもっと挑戦できる状態をつくっていきたいと考えています。

 

中島:

売り抜くために買うのではなく、共に育てるために引き継ぐ。そこが今までのMAと根本的に異なる点だと思っています。

Ballistaにしかできない」——構想・AI・経営を一気通貫で背負う

インタビュアー:

世の中にM&A仲介、PEファンド、コンサルティング、AIベンダーが個別に数多く存在する中で、「構想・AI・経営」を同一の責任主体で一気通貫に担う設計にこだわった理由は何でしょうか。

 

中川:

私たちが強みとして持っているのは、何よりも「人」です。Ballistaには経営人材が数多く在籍しています。その人材をレバレッジし、AIも、コンサルティング能力も、変革力も、経営力も、そしてやり抜く力も組み合わせながら、事業をグロースさせられる。それが私たちの存在意義だと考えています。

中島:

コンサルティングだけでなく、事業開発や人材の事業も、私たち自身が当事者として立ち上げ、運営してきました。外から助言するのではなく、自分たちの事業として、採用も、資金繰りも、うまくいかない時期も含めて経験してきた。だからこそ、承継先に対しても「絵を描いて渡す」のではなく、経営に入り込んで一緒にやりきれる。この当事者性こそ、仲介会社にもファンドにもコンサルにも真似のできない、Ballistaならではの強みだと考えています。

中川:

お客様と一体になって企画を描き、実行する。自社でもプロダクト開発や実装を進めながら、営業もマーケティングも行う。それをずっと続けてきました。その試行錯誤の中で蓄積したノウハウがあります。創業からまだ4年ではありますが、その中で急成長を遂げてきたノウハウを、潜在的な成長力を有する中小企業にもご提供できるはずだと考えています。

そして、単にスキルだけの話ではありません。私たちには、「本気で社会を変えたい」という強い意志を共有するメンバーが揃っています。不可能を可能にしていけるのは、最終的には人の力です。

EXITをゴールにしない——資本の理屈より「あり方」を選ぶ

インタビュアー:

短期EXITを前提とせず継続保有をするのは、資本的な目線からすると難しい選択だと思います。それでも、その選択に踏み込む理由をお聞かせください。

 

中川:

人の幸福は、経済価値だけでは測れないと考えています。

もちろん利益を生み出すことは、事業を存続させる最低限の条件です。ただ、それ以上に、そこで働く方々が、自分たちのプロダクトやサービスが浸透していくことに喜びを感じ、働いていて楽しいと思える。そうした幸福が重要だと考えています。私たちは創業からずっと、「働く人の幸福」を大切にしてきました。それと同じことを、ご一緒する企業の皆さまにも感じていただきたいのです。

 

中島:

同じ目線で歴史を重ね、共に存続させていく。その点に価値を感じていただける企業様とご一緒したいと考えています。短い時間軸で売り抜くことを前提とする相手には、代々続いた事業をどうしても託せない、というオーナーは少なくありません。私たちが永続保有にこだわるのは、そうした方にこそ安心して引き継いでいただけるからでもあります。

 

中川:

これは突き詰めると「あり方」の話です。資本論で考えれば、今回の選択が正しいのか間違っているのかは分かりません。ただ、Ballistaという会社はこうしたあり方を選ぶ、というのが答えです。

私たちは外部からの出資を受けず会社を経営しており、私たち自身が株主です。だからこそ、「こうありたい」という姿に向けて意思決定し続けています。

AI×グリット——本物の価値を、消さずに伸ばす

インタビュアー:

AIに代替されない本物の強みを持つ企業を、AIで支援する」というのは、少し逆説的にも聞こえます。承継先企業へのAI実装を、どのようにイメージされていますか。

 

中川:

AI時代だからこそ、人間の本質的な価値にフォーカスした支援が必要だと考えています。

AIによって、これまでできなかったことがレバレッジされ、生産性は何倍にもなってきています。私たち自身、「AIを活用し、半年で業務生産性を3倍にする」を社内目標に掲げ、全社で取り組んでいるほどです。

承継させていただく企業の生産性を上げることは、もちろん重要です。ただ、それだけでは単なる「買収」になってしまいます。そうではなく、その企業が持っている本質的な価値を大切にしたうえで、私たちの強みである「グリット(やり抜く力)」や人間力をかけ合わせる。AI×グリット、という発想です。

たとえば職人の手仕事のような、現代における普遍的なもの。こういったものがむしろAI時代だからこそ、再発見されるべきものだと考えています。効率化が重視される世の中になるほど、フィジカルな体験や手触り感のあるサービスに、人はより価値を感じるようになります。

 

中島:

個人的に、私は伝統技術や工芸品がもともと好きなので、職人の手仕事のような命が通った仕事に、会社として関われることを楽しみにしています。
一方で、のものや伝統技術は、そのまま無理に残せばよいというものでもない、とも考えています。現代との接続点を失ったまま存続させることには、限界があるはずです。ここで言う「接続」とは、技術そのものを変えることではありません。変えるのは、届け方です。誰に、どんな用途で、どの売り方で価値を届けるのか。その設計を今の時代に合わせて組み直せば、職人が守ってきた核はそのままに、価値をむしろ高められる。国内で埋もれていたものが、海外では驚くほど正当に評価される、ということも起こり得ます。そうした接続の余地は、まだ数多く残されていると考えています。

 

中川:

変えることと、変えないこと。その見極めが重要だと考えています。具体的に言えば、これまでの屋号や社名を無理に変えることはしませんし、本社を東京に引き上げることもしません。そこで働く方々の雇用も守ります。変えるのは、価値を届けるための売り方や新しい販路といった部分であり、その企業が大切にしてきた核は動かしません。

 

インタビュアー:

AIに対する現場からの抵抗や、ITリテラシーの課題もありそうですが、いかがでしょうか。

 

中川:

AIは、DXの時代とは少し異なると考えています。これまでのデジタル化は、人間がツールに合わせてやり方を変える必要がありました。しかし今のAIは、ある程度人間のやり方に寄り添ってくれます。テキストで相談しながら答えを得られるのが典型で、私たちのありたいように、AI側が適応してくれます。

また、現場で行われていることを「構造改革しよう」と無理に変えにいくつもりはありません。むしろ、変えないことにこそ価値があります。地域の企業がこれまで行ってきたことは素晴らしいことで、それが今の伝統を作り上げてきました。変えないことを大切にする。それが今回の取り組みの、非常に重要な部分だと考えています。

地域から地域へ、循環をつくる——地銀・信用金庫との連携

インタビュアー:

地域金融機関と組む理由について、案件機会の創出以外にどのようなことを期待されていますか。

 

中川:

私たちが目指す地域の未来は地産地消、つまり、地域の中でしっかりと経済が回る状態を築くことです。そのためには、地域銀行や信用金庫の方々との協力が絶対的に必要となります。

「東京から地域へ」という一方通行の構図ではなく、地域の中で回り、地域と地域がつながり、地域と東京、地域とグローバルがつながっていく。その循環の仕組みをつくっていきたいと考えていますし、政府や省庁を巻き込んだ社会実装にもつなげていきたいです。そうした大きな流れの中で、この国全体が良くなっていく機運が生まれるのではないかと考えています。

その地域に住んでいる方々を何より大切にし、この事業を通じて、その方々にとっての幸せを数多く生み出していきたいと考えています。

 

中島:

結局のところ、誰のための承継なのか、という点に尽きると思います。買い手が利益を得るための承継なのか、それとも、その事業とともに生きてきた地域の人たちのための承継なのか。私たちは、後者でありたい。地域銀行や信用金庫の方々は、その土地の企業を何十年も見てきた、いわば地域の記憶そのものです。その方々と組むということは、案件を紹介していただく以上に、「この地域にとって何が本当に大切か」を一緒に考える相手を得るということだと考えています。

 

受け継ぐのは、誰かの人生——事業承継を考えるオーナー様へ

インタビュアー:

最後に、事業承継を考えていらっしゃるオーナー経営者の方々へ、メッセージをお願いします。

 

中川:

私たちは、人生をかけてこの事業に取り組みます。

お金を儲けたいということではなく、人生の目的や、Ballistaとしての「あり方」に直結する、非常に重要な事業です。一緒に磨き、育てていく。どちらが上でも下でもなく、対等にともに歩んでいける方々とご一緒できれば、大変嬉しく思います。そうした未来を、一緒に作っていきたいです。

 

中島:

思いは、中川とまったく同じです。
価値ある事業が、後継者がいないというだけで失われていく。あるいは、築いてきた方々の思いとは切り離されたかたちで引き継がれていく。これは日本にとって、健全なことではないと考えています。だからこそ私たちは、事業を「買う」のではなく「受け継ぐ」という立場を貫きたい。オーナーが人生をかけて築いてきたものを、同じ重さで引き受け、次の時代へ渡していく。後継者不足という課題を、地域の活性化にまでつなげていく。本気でそれを実現したいと考えています。

 

 

RECOMMENDおすすめ記事