混沌の時代に羅針盤を示す ―統合型安全保障支援サービス「Polaxis」が目指す新しいエコシステム

column

2026.04.13
  • コラム

 

 

米中対立をはじめとしたサプライチェーンの分断や関税政策といった地政学リスクの高まり——。企業を取り巻く安全保障環境は急速に変化しています。しかし、本領域の専門知見を持つ人材は慢性的に不足しており、コンサルティングの提言が現場に定着しないという課題も根深く残っています。そうした状況に一石を投じようと今回Ballistaが立ち上げたサービスが、安全保障に特化した統合型支援構想「Polaxis(ポラキシス)」です。

防衛領域のスペシャリストであるシニアマネージャー・牧山毅海と、リスクマネジメント・経済安全保障に精通する執行役員/ディレクター・大坪宏之。異なる専門性を持つ2人が、なぜ今このサービスを立ち上げたのか。その思想と構造に迫ります。

 

「今がそのとき」——立ち上げの原点

——Polaxisを立ち上げようと思ったきっかけを教えてください。

大坪:

大きく2つあります。まず一つは世の中の流れです。世の中の安全保障に対する関心が急速に高まったことにより、企業においても安全保障に係るより大きな事業リスクを抱えたことで問題意識も変わってきました。もう一つは、私たちが持つケイパビリティです。牧山は防衛、私はリスクマネジメントと経済安全保障というなかなか得られない組み合わせが、実はBallistaに揃っていたんです。以前から「こういうことをやっていきたい」と話していた中で、「今こそその時だ」という確信が重なり、今回のPolaxisの立ち上げに至りました。

 

牧山:

私は自衛隊時代から安全保障に関わる人脈を幅広く築いてきました。その方々がこの領域で正しく力を発揮し、ビジネスとして活躍できる世界を作りたいという思いがずっとありました。自衛隊退職時から安全保障に関連するビジネスは行っておりましたが、引き合いも増してきたため、機は熟したと判断し立ち上げを決意しました。

 

——日本企業の安全保障対応力について、率直にどう考えてますか?

牧山:

一昔前は、安全保障に関わること自体がネガティブに受け止められていました。ですが、その認識は大きく変わってきています。ただ、認識は変わってきても、実際に対応できる人材はほとんどおらず、対応が全く追いついていないというのが現状です。

 

「北極星」と「羅針盤」——名前に込めた思い

——「Polaxis」というネーミングの意図を教えてください。

牧山:

Polaxis」とは、常に変わらない基準を示す「北極星(Polaris)」と、進むべき方向を示す「羅針盤(Pyxis)」を組み合わせた造語です。先行きの見えないVUCA時代に、各企業が目指すべき北極星のようなビジョンと、そこへ向かう航路を共に見つけられる存在でありたい、という思いが込められています。

 

 

——5つのコンポーネント(※)を「循環させる」統合型の設計にした理由はなんですか?

大坪:

どれか1つが欠けても、クライアントに最大の価値を届けることができないからです。私たち一人ひとりが万能だと思っていないですし、今の時代、全て一人で解決できるコンサルタントなど存在しないし求められていないと感じています。クライアントが本当に必要としているものに的確に応えるための機能を考えると、必然的にこの5つのコンポーネントとなりました。

 

※ Polaxisは、以下の5つのサービスコンポーネントを有機的に結合し、企業の課題解決を効率的かつ効果的に支援する。

Talent: 不足する専門知見・実務遂行能力のオンデマンド提供

Consulting: 戦略策定から体制・オペレーション構築までの一気通貫支援

Advisory CXOレイヤーを対象とした意思決定支援

Academy: 本サービスに関連するリテラシー向上による人的資本の強化

Intelligence: 関連情報の収集・分析を通じたビジネスインパクト評価

 

「力の源泉」としての人材プラットフォーム——Polaxis Talent

——第一弾として「Polaxis Talent」を先行リリースした理由を教えてください。

牧山:

一言でいえば、全ての根源になるからです。安全保障の専門家は領域ごとに細分化されており、たとえばロシアの安全保障関連の情報に詳しい人や、中国の安全保障関連の情報に詳しい人、希少資源について詳しい人など、それぞれの領域にエキスパートが存在します。その方々をチームとして束ねて、各コンポーネントの機能を動かしていき、さらに、その専門家の方々に対してビジネスとしてきちんと報酬を還元できる仕組みを先に作るべきだと考え、最初にPolaxis Talentをリリースしました。

 

——多様な背景を持つ人材を束ねるうえで重視したことは?

牧山:

この業界はこれまで、防衛は防衛、経済安全保障は経済安全保障と分断されており、専門家同士の横連携がほとんどありませんでした。私たちが目指しているのは、その領域を横断させる「掛け橋」の役割となることです。たとえば「経済安全保障×中国」「経済安全保障×防衛産業」といった掛け算が生まれると、新しい価値が生まれると考えています。また、専門性が高くなるほどビジネスと接続しにくくなるケースもあるため、そこを私たちが橋渡しすることで、専門知見をビジネスの形態に変換していくことが役割だと考えています。

 

「提言を現場に定着させる」——従来のコンサルとの違い

——「コンサルの提言が現場に定着しづらい」という課題を、Polaxisではどう解決しますか?

大坪:

以前からコンサル業界に対し、高い専門性を持ちながらも、それをクライアントの戦略やオペレーションに落とし込み、現場の変革を実現できる人がほとんどいない、という大きな課題認識を持っていました。結果として、専門性の高い様々な助言を受けても消化不良のまま支援が終了してしまうクライアントを何社も見てきました。その点、Ballistaは「Gritする(やり抜く)」マインドをメンバー全員が持っています。高い専門的な知見を咀嚼して、それを泥臭く現場のオペレーションに落とし込んでいく。これこそが私たちの価値の源泉であり、他社にはない強みだと思っています。

 

牧山:

既存のファームには大きく2つの限界があると考えています。ハイレイヤーの戦略は描くことが可能だが実務にまで踏み込めないパターンと、逆に専門性は高いが戦略を描くことが得意でないパターンの2つです。私たちBallistaはその両方を、高い専門性を有したプロフェッショナルを巻き込みながら一気通貫でやりきります。

 

引き合いが強いテーマと、ターゲット企業

——現時点で、もっとも引き合いが強いテーマはどれですか?

大坪:

経済安全保障の文脈で、サプライチェーンの可視化ニーズが非常に強いです。「ビジネスを展開するうえでどこにリスクが潜んでいるのかをあらかじめ把握したうえで意思決定したい」といった要望は今後も無くなることはないと考えます。

そして近い将来、防衛・経済安全保障・リスクマネジメントの3領域を統合した形での引き合いも確実に出てくるはずです。BCPも従来はリスクマネジメントの文脈で語られてきましたが、今はそれが経済安全保障や防衛とも密接に繋がりつつあります。その横断的な領域をスピード感をもって手がけられる企業は、現時点では限られていると感じています。

 

 

——どんな規模の企業・業種がメインターゲットになりますか?

大坪:

商流が複雑な製造業が中心になるかと思います。防衛産業についても、これまでは超大手の重工業系企業が市場をほぼ独占していましたが、現在はスタートアップの企業が積極的に参入してきています。そうした企業と組んで、業界に一石を投じていきたいというのが私たちの思いです。

 

「エコシステムの中心地」へ——それぞれのビジョン

——今後Polaxisがどんな存在になっていってほしいか、それぞれのビジョンをお聞かせください。

大坪:

企業だけでなく、各領域の専門家や官公庁まで、幅広いステークホルダーから「まずPolaxisに相談してみよう」と思われる、エコシステムの中心地になりたいというのが私のビジョンです。「守りのコスト」という消極的な見られ方を払拭し、リスク管理までを戦略的に取り込みながら収益最大化に貢献できる安全保障サービスを提供し続けていきたいと思っています。

 

牧山:

業種・業界・規模を問わず、誰もが気軽に相談を持ち込める窓口として存在していきたいですね。さまざまな人と人をつなぐ掛け橋になること、それがPolaxisの将来像だと思っています。その根底には、日本を強くしたいという思いがあります。ただそれ以上に、今この時代を生きる私たちには、次の世代により良い環境を引き渡す責務があると思っています。経済的な発展だけでなく、より安全に暮らせる社会を連携しながら創造して、次の世代に渡していく。それがPolaxisを通じて実現したいことです。

RECOMMENDおすすめ記事