AIは、経営と組織をどう変えたのか ―SMBC日興証券×Ballistaに学ぶ、AI起点での経営・事業・組織変革の実装―

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2026.08.25
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(写真左から 勝村周平・佐々木有香氏)

 

AIによる技術革新が急速に進むなか、単なる業務効率化や局所的なPoC(概念実証)を超えて、AIを経営戦略や事業、組織全体に組み込むことが企業の競争力に直結するようになりました。多くの企業がAI導入に取り組み始めているなか、SMBC日興証券株式会社は早くからAIの可能性に着目し、経営変革を推進してきました。
今回は、同社デジタル戦略部長の佐々木有香さまと、変革に伴走してきた株式会社Ballista代表取締役社長の勝村周平による対談をお届けします。
AI導入の背景から、現場への普及の難しさ、外部パートナーとの協業スタイル、そして「人財とAIの共創」という中期経営計画におけるビジョンまで、実践者たちの率直な言葉でお伝えします。

 


 

佐々木 有香 氏

SMBC日興証券株式会社 デジタル戦略部長
金融事業会社に入社後、 外資系コンサルティングファームにてDX・AI、 デジタル人材に関する戦略立案や案件推進に従事。 2022年にSMBC日興証券に入社。 デジタル戦略部長として、 DX戦略の実現に向けた各部門のデジタル案件推進やデジタル人材の採用・育成に関する企画、 施策推進をリード。

 

勝村 周平

株式会社Ballista 代表取締役社長
リクルート、アクセンチュア、PwC / Strategy&を経て、2023年7月よりBallistaに参画。コンサルティング部門の統括から、取締役として全社の経営の舵取りを経て、2026年8月より代表取締役社長に就任。事業戦略や新規事業、組織・人財、デジタル・AIなどの領域において、大手企業経営層との豊富な協業経験を持つ。

 


 

経営の「全振り」から始まったAI推進の歩み

 

インタビュアー:

SMBC日興証券のデジタル戦略部は2022年の発足当初から、「案件の推進」と「人財の育成」を2本柱として推進してきた部署とお伺いしましたが、AI活用が本格化し始めたとき、経営サイドからはどのような期待や指示がありましたか?

 

佐々木氏:

2023年頃、経営から「AIは、使うか使わないかではなく、どう使うかが重要だ。各部門に深く関与し、とにかくAI活用を推進すべし」という指示を受けました。

デジタル戦略部が2022年に立ち上がった際は、DXのソリューションと言えば機械学習や自動化技術が主でしたが、生成AIが登場してからソリューションの選択肢のほぼすべてがAI関連に変わりました。

 

インタビュアー:

現在、デジタル戦略部が取り組んでいるテーマを教えてください。

 

佐々木氏:

生成AI関連の案件は増える一方で、2024年までは今ある業務の中でどうテクノロジーを活かすか、それをどうAIで効率化するかという文脈のものが多かったのですが、

2025年以降、経営から「小粒な案件を積み重ねても会社全体へのインパクトは小さい。大きな変革につながるテーマに取り組むべきだ」という指示がありました。

AIエージェントも視野に入れながら、各部門が自分たちの事業をどう変えていくかを描き、そのプロセスに私たちデジタル戦略部が一緒に入り込んでいく。それが今の大きなテーマです。

 

勝村:

2023年ごろから関わらせていただいていますが、デジタル戦略部の役割やプロジェクトテーマもAIにシフトしていると感じます。最初は少数のプロジェクトから取り組まれていましたが、今では全社を巻き込む経営レベルのテーマへ昇華されている印象です。

 

「AIを使わなくてもできる」を乗り越える

 

インタビュアー:

AIを社内に浸透させていく中で、特に難しかったポイントはどこでしたか?

 

佐々木氏:

一番難しいのは、AIを使わなくても業務そのものはこれまでのやり方でこなせてしまうという点です。そのためAIを使うか使わないかの判断が、社員一人ひとりの判断に委ねられてしまいます。

AIを使いこなしている「コアユーザー」の社員は、すでに毎日AIをそばに置き業務に組み込んでいる一方で、使い方が分からない、業務にどう織り込めばいいか分からない、という社員に寄り添うことが今後の重要なテーマです

 

インタビュアー:

その変革のモメンタムをつくるために行っている特徴的な取組はありますか?

 

佐々木氏:

当社では、各部門に「生成AI推進責任者」を配置しています。

デジタル戦略部だけですべての部門をリードすることは難しいため、各部門の生成AI推進責任者と連携しながらAIの企画や推進を進めています。また、月次で全部門の責任者やコアメンバーが集まる会議を設け、進捗の共有だけでなく、うまくいかなかったPoCの失敗事例なども含めたナレッジ共有の場にしています。社内の部門同士は競争するのではなく、事例を横展開して共創していこうという方針です。

競合他社はもちろん、お客さま自身でもAI活用が進む中、当社ならではの価値を出すためにも社内の連携を非常に意識しています。

 

外部パートナーに求めるのは高いアジリティとプロフェッショナリズム

 

インタビュアー:

外部の力を借りようと判断されたのはどのような理由からでしょうか。また、Ballistaにご依頼いただくことになった経緯を教えてください。

 

佐々木氏:

私が前職のコンサルティングファームを辞め、SMBC日興証券に来た理由の一つは「内製化を進めるため」でもあるので、外部に頼りきりになるのは本意ではありませんでした。

ただ、やはりプロのコンサルタントの方々が有する高いケイパビリティが必要な領域というのは存在します。

勝村さんのチームは、特定の専門領域に限定されず高いアジリティとコンサルティングに必要なプロフェッショナリズムを持っています。実際に、AIに関する戦略策定やユースケースの企画、組織や人財の変革まで多様なプロジェクトを強力に支援してくれています。

 

私自身も、ある程度の仮説や方向感は持ちながら社内変革を進めていますが、それを阿吽の呼吸で理解し、アウトプットを後押ししてくれるスピード感は、他社にはないBallistaさまの最大の強みだと思いますし、常駐型で私たちの社員と垣根なく動いてくれるコミット力も魅力に感じています。

 

また、Ballistaさまには、緊急度が高いテーマだけでなく、「重要度は高いものの、なかなか着手できていない」テーマの推進においてもお力添えいただいています。

例えばAI活用促進施策や、ROI管理のための定点観測のような、多忙な時期にはつい置き去りにしがちな領域も、社員と共にスピーディーに推進してくれるので、助かっています。

 

年間46万時間削減が示す成果と、次の挑戦

 

インタビュアー:

社内でのAI活用が進むなか、どのような効果や成果がありましたか?

 

佐々木氏:

今ではAIの取組が徐々に全社に広がってきており、年間46万時間の業務時間削減という成果を出すことができました。

AIの社内活用率は35%を超え、2,700人以上がAI関連の研修を受講 (※1) しており、金融機関として初のデジタル人材育成大賞 (※2) をいただくことができました。

 

※1:20264月時点。

※2:一般社団法人デジタル人材育成学会が主催する、デジタル人材の育成やDX推進において顕著な成果を上げた企業・団体・個人を表彰する制度。

 

インタビュアー:

それだけの成果が出てきたなかで、デジタル戦略部が見据える次の課題はどこにあるのでしょうか?

 

佐々木氏:

今の課題は「横串」です。

各部門がそれぞれにやりたいことだけに集中してしまうと、部門ごとにシステムのアーキテクチャやデータ基盤を考えることになり、また類似のAIを作ってしまうことにより、場合によっては非効率なことが起きてしまいます。デジタル戦略部のミッションは、各部門のやりたいことを理解しながら、横串を刺し、社内全体で効率性やセキュリティを担保したシステムや仕組みを構築する連携役になることです。

ただ同時に、これまでの3年間はAI活用全体をデジタル戦略部がリードしてきましたが、次の段階では各部門が自走できる体制を目指しています。

私たちはサーバントリーダーシップを持ちながら、各部門がやりたいことを支える立場に変わっていく。一歩下がりつつも、全社共通の基盤をしっかり形にしていくことが次のチャレンジです。

 

AI時代に求められる「人財」と「コンサルタント」の再定義

 

インタビュアー:

AI人財に求められるスキルや役割は、今後どう変わっていくとお考えですか?

 

佐々木氏:

以前はスキルに応じて職種が区切られていましたが、AIによってスキルの越境や掛け算がしやすくなり、より個人が価値を発揮できる領域が広がっていくと感じています。例えば、生成AIの発展である程度のコーディング作業はAIに任せられるようになった分、データサイエンティストがプロジェクトマネジメントにも手を伸ばせるようになり、より個人が対応できる範囲が広がりました。

どんな職種であれAI時代の人間に必要なのは、問いを設定し、本質は何かを掘り下げて考える力です。AIは学習した範囲でしか提案できません。「一見無関係に見える2つの事象の根本課題が実は同じではないか」というような点と点をつなぎ合わせ、本質を見抜く思考こそ、今後人間に求められると感じています。

 

勝村:

コンサルティングも同様です。リサーチや分析、資料作成といった業務は今後AIに代替されていくでしょう。一方で、「そもそも何をAIに問うべきなのか」や「AIが出した情報からどう新たなアイデアや示唆を出すのか」、「アイデアを実現するためにどう組織を動かすのか」といったことが今後のコンサルタントの価値だと思っています。

 

佐々木氏:

オペレーション業務がAIに代替されていくなか、構造化して考えるというコンサルティングが持つ専門性はむしろAI時代にこそ広がるかもしれません。そしてそんな思考力を備える人財の育成など、コンサルによる支援領域はまた新たに生まれるのではないでしょうか。

 

「人財とAIの共創」——中期経営計画が描く、証券業界の未来

 

インタビュアー:
AIが今後さらに発展していく中で、5年後の証券業界にはどのような変化がもたらされるとお考えですか?

 

佐々木氏:
生成AIの発展が過去のテクノロジーツールの台頭と大きく異なるのは、社員だけでなくお客さま自身も手軽に生成AIを使えるという点です。
「どの商品を選べばいいか?」等とAIに相談することが、個人投資家の方々にとって当たり前になってきています。企業が提供してきた役割の一部をお客さま自身が手にできるようになったとき、それでも選んでいただける当社の価値とは何か、という問いに立ち返る必要があります。AIに任せる部分と、人が担う部分、人とAIが協働すべき部分を明確にして、フロントで働く社員がより「人間らしい価値」に時間を使えるよう変革していくことが急務です。

 

勝村:
AIというと業務効率化がメインテーマになりがちですが、佐々木部長がおっしゃった目指す姿は、そこで終わらない話ですよね。

 

佐々木氏:
そうですね。当社の中計のキーワードの一つは「人財とAIの共創」です。単なる効率化ツールではなく、人とAIのコラボレーションによる新たな価値創出を目指していきます。

 

デジタル戦略部の「参謀」として——これからのBallistaに期待すること

 

インタビュアー:

最後に、今後Ballistaとともに挑戦していきたいことや、期待していることを教えてください。

 

佐々木氏:

AIを活用するにあたっての「問いを立てる力」や「本質を考える力」をデジタル戦略部の社員だけでなく、あらゆる部門の社員に持ってもらえるようになることが私たちの目標です。今すでに、デジタル戦略部の社員と勝村さんのチームが協働することで、社員の思考力が飛躍的に伸びているのを感じています。

プロジェクトを推進することはもちろんですが、対話の中で本質的な問いに立ち返らせてくれる。こういった形での人財育成の伴走を、これからも期待しています。

 

勝村:

今後AIが台頭していくなか、お客さまのオフィスに常駐しながらワンチームで考え続けるスタイルが求められる場面が増えていくと考えています。

「我々のスコープはここです」といった線引きをせず、お客さまのビジネスが一歩でも前に進むために必要な支援を続けていく。そういった姿勢で、これからもご一緒できると嬉しいです。

 

 

【SMBC日興証券株式会社】

SMBC日興証券は、1918年に川島屋商店として創業して以来、100年以上にわたり、多くのお客さまからの信頼に支えられ、お客さまとともに歩んできました。2009 年10月からはSMBCグループの一員となり、より一層お客さまのお役に立てるよう、総合証券会社としての機能の充実に努めています。
お客さまとともに発展し、最高の信頼を得られる会社を目指し、「いっしょに、明日のこと。」のブランドスローガンの下、これからも金融のプロフェッショナルとして、革新性の高い金融サービスで、お客さまにとっての最善の利益を追求していきます。
URL:https://www.smbcnikko.co.jp/

 

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